本日の様子 05/29

 ゆうすげ

常連のH氏にコラムを寄せて頂きました。いつもありがとうございます。


『カモシカに出会った話』

数年前のことである。我が家の近くを流れる沢の上流では小型ながらもヤマメ釣りが楽しめた。

それは確か、晩春の暖かい日であった。
久しぶりにヤマメ釣りに出かけてみた。しかし、毛鉤を水面に落としても、魚は全く出てこない。

半ば諦めながら、沢を釣り上ってゆくうちに、突然、「ピロロロロ----」という不思議な声を耳にした。その声は頭の直ぐ上から聞こえ、次第に遠ざかっていった。

アカショウビンだ!直ぐに上空を振り仰いだが、その姿を認めることはできなかった。

ご存知の方も多いと思うが、アカショウビンというのはカワセミやヤマセミと同じ仲間である。
体は赤褐色、嘴は赤く美しい。夏鳥として南の国から渡ってくる。沢沿いの森に住み、カツツムリやサワガニ等を食するという。

小生はその実物を見たことがないが、鳥類図鑑でその姿を眺め、野鳥の囀りを収録したカセットテープで、その特徴的な声は聞き馴染んでいた。


数日後、何とかアカショウビンの姿を見たいと思い、再び、同じ場所を訪れた。

ちょろちょろと流れる沢沿いに、森の奥深く上って行くにつれて、勾配は次第にきつくなってきた。アカショウビンが生息すると思われる森はあまりにも広く、その声さえも聞くことはできなかった。

諦めて、そろそろ引き返そうと思い、上ってきた沢を振り返った。直ぐ両側に尾根が低く迫っていた。


そのとき、右側の尾根上に茂る木立の中に、何かが動く気配を感じた。カモシカだ!しかも、2頭。

そのとき、「どどっ!!」という地響きがして、1頭が斜面を駆け下りてきた。
小生がいる数メートル先で沢を横切ると、反対側の尾根に駆け上っていった。子牛ほどの大きさである。丸々と太り、圧倒されるような重量感があった。恐らく、斜面を駆け下りるまで、小生の存在に気付かなかったのであろう。

尾根に残る、もう1頭の方は、どうやら小生の存在に気付いたらしく、そのまま、尾根上を進んでいってしまい、間近に見る機会を逃した。

アカショウビンの姿は、とうとう見ることはできなかった。しかし、逞しいカモシカの勇姿を間近に見ることができ、しばらくの間、幸福感に浸ることができた。

2010年05月29日(土) 08:35

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